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〜精神障害者の雇用が進む今〜
働きたい!を応援する働く当事者からの実践報告セミナー 2013
 どうしたら長く働けるのか、当時者はどう考え、どういう工夫をしているのか、それを本音で話し合おうと始まったシンポジウムの3回目。当日は天候にも恵まれ、会場はおよそ200名の当事者・関係者の方々の熱気で溢れかえっていました。

 雇用促進法の改正に伴い精神障害者の雇用が更に進む事から、今年度は(医療機関と連携した精神障害者の就労支援モデル事業)が予算化されましたが、棕櫚亭ではこの事業で近隣の病院に出向いて、就労支援ノウハウの共有や働いている人達の出前講座等を、1年を通して行っています。いわば退院促進事業の就労版ですが、今回はこの事業を使ってのシンポジウム開催に成りました。そうした経緯もあり、今回精神科医でありながら、大阪で先進的な就労支援を行っている田川精二先生に来ていただき、第一部の講演をお願いしました。また当日は厚生労働省職業安定局 就労支援室の竹中郁子さんにもご挨拶いただきました

第1部 特別講演
講師 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 理事長 田川精二先生
 田川先生の話はパワーポイント資料総数22枚を使って、すべてが中身の濃い盛りだくさんの内容でしたが、驚いたのは7年前に立ち上げた就労移行支援事業所JSNのトレーニングの考え方が当法人の就労移行支援事業所ピアスと似ている事でした。都内では就労準備性等無視した結果として、職場の不適応と離職が繰り返されているのに、JSNでは、 毎年50人程度の就職者を出し高い定着をしているということにも驚きました。精神科医が何故?と最初は思いましたが、それもそのはず私達にも多くの示唆を与えてくれた先駆者の方々に影響をうけ、就労準備の大切さや理念を充分にわかった上で、活動を開始しているのです。(就労に消極的と言われている医師が一歩前に出る必要があった)と語る先生の姿に精神科医も就労支援の仲間になれるんだと、胸をゆさぶられた人は多かったと思います。病状悪化のおりや、求職、離職の局面等、医師に相談するたびに,けんもほろろに扱われてきた今までの事を思うと、本当に胸のすく思いでした。今後は大阪だけではなく、全国にJSNの活動を精神科診療所の医師を中心に拡大してゆく予定だそうです。東京でも着実な準備をすれば就職は成功するという考えがもっと広がってほしい、そこを福祉の就労支援機関が繋ぐことが出来ないものかと思いをめぐらしました。
 また支援者のハイリスクハイサポートという考え方や、病気の大きさは変わらなくてもその人の人生が大きくなればいいという話も、支援を続けているものとして大きく共感できるものでした。

 第2部シンポジウムにも後半参加して下さった先生は、(JSNの語り部のメンバーと今日の当事者がジョイント出来ればいいね)と言ってくださいました。大阪がすっかり身近になった素晴らしい講演でした。

第2部 仕事談話室の紹介
 今年度はシンポジウム前に仕事談話室というオープナーで行っている余暇支援プログラムの活動内容を利用メンバーからご紹介させて頂きました。このプログラムは毎月一回仕事後の夜に開催しており、就労にまつわる様々な企画を立て、時にはスタッフもともに楽しみながら、仕事を安定継続するための情報交換・悩み相談/共有を行っています。
 この様な働く当事者同士がサポートし合える・繋がる場が増えることを願い、今回は僅かではありましたが発表をいたしました。
 また近年この仕事談話室参加者の中でも、当事者から外に直接メッセージを発信して障害者雇用の理解を広めて行きたい!という気運が高まりを見せており、本当に時代が前向きで良い方向に勢いづいてきたことを実感しています。

第3部 働く当事者のシンポジウム
 そんな高まる当事者のメッセージを伝えたいという熱い思いを受けて、第3部では今年も自らの仕事体験を語るシンポジウムを行いました。
 今回も沢山の参加希望者があり、関心と期待の高さを感じました。参加者の内訳も多岐にわたっていて、就労支援施設(就労継続B型・移行支援事業所など)・地域活動支援センター・医療機関デイケア・当事者・ご家族・企業など昨年にも増して広がりを見せており、これも法改正後の精神障害者の就労ニーズ増加・拡大を明確に示すものだと思われます。
 しかしその一方で、効率的な役立つ就労活動の情報が、多くのこれから働きたい!と願う当事者の方々に行きとどいていないのが現状です。
 今回は4名の当事者の方々に出演して頂き、なかなか普段聞くことの出来ない、実際働く職場で身につけた定着のためのノウハウ、苦労話とピンチの際の乗り越え方などをお話しいただきました。

 今回の出演に際しては、4名とも快く引き受けて下さり、数年前のなかなか対外的に障害や病気のことをオープンにお話しすることが難しかった時代(今も決して簡単なことではないと思いますが)を考えると、仕事談話室でのメッセージを発信したいという自然な高まりも含め(スタッフが無理に引っ張り後ろから押している訳ではないところがポイントです)、今後様々なことが当事者自身の力で持って前向きにより良く変革していく可能性を大いに感じます。

 当日は長丁場にも関わらず途中で離席する方もほとんどなく最後まで参加者の方々の熱気で会場は包まれていました。
 そして支援者としてはそんな熱意をサポートするために、決して時流に追いついているとは言い難い、支援体制・就労準備をする機会(施設サービスの整備等)を急ピッチで進めなければならないとも感じております。今回、後援頂いた社会福祉法人白梅会のスタッフとともにシンポジウム進行、当日までの運営準備を共同できたことは今後においても連携上有効な機会となりました。

 終了後のアンケートには『どのような支援サービスがあるか分かりました』『どのように困難な状況を乗り越えたか分かって良かったです』という様なノウハウに関してのご好評を幸い頂きました。しかし何より一番多くあった反応が、当事者のお話を聞いて『元気を貰った』『熱い気持ちがあり勇気が湧きモチベーションが上がった』というような内容であり、その感想を見て主催者としては、明日の発展に繋がる気がして嬉しく思いました。

(補足)
 当日シンポジストのAさんが伝えきれなかったことを代表して2点ほど。
@自分の時間を大切に(例:長電話に付き合いすぎない等)
A人と接する時には、心をオープンに
 以上です。

 シンポジストの方が最後の挨拶で言った『いつも夢を持っていきましょう!』というメッセージを忘れずに来年も当事者の働きたい!という願いと、発信する活動を応援していきたいです。
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