【ご報告】H29年度第1回多摩就労研究会

オープナー 2017/06/30

6月15日にH29年度最初の多摩就労研究会(以下就労研)が行われました。
就労研とは多摩地域のセンターが中心となり、就労支援機関、ハローワーク、医療機関の参加者が精神障害者の就労支援について主体的に考えていく定例研修会のことです。

前年度まではオープナーがテーマを決めてきましたが、今年度はタラント、けるん、オープナーの3センターが持ちまわりとなり、精神障害者の定着支援の問題をどうにかできないかと、現在各センターで行っている取り組みを出し合うことにしました。

今回はタラント企画です。今、定着支援のツールとして広がりつつあるWebシステム「SPIS」を紹介していただきました。精神障害・発達障害に特化した就労移行支援事業を展開するJSNが訓練記録用に使用していたシステムを基に、有限会社奥進システムが企業の方にも使いやすいよう改良を加え、平成23年に開発された就労定着支援システムです。タラントでは現在7人の方に導入しているとのことです。SPISについて、より詳しい説明を行うため、心理臨床ネットワークアモルフの宇田亮一氏をゲストとしてお迎えいたしました。宇田氏からはSPISが当事者立案で出来たものであること、体調管理のための評価項目を個別で設定できるなどのシステムの仕組みをお話いただきました。また、その後の意見交換ではノウハウを教えていただいたり、企業の方への打診の時期や仕方など話し合うことができました。

棕櫚亭でも昨年度から現在まで4人の内、2人の方に導入しております。SPISの特徴としては当事者、企業担当者、支援者がWeb上で対話し、情報共有できるため、企業の方と本人との関係性やどんな風に仕事をしているのかが以前より見えるようになりました。また、定期的に関係者が集まる機会(リアルSPIS)ができたことで、本人の雇用管理がしやすくなったように感じます。

以前、拡大就労研で松為先生に地域ネットワーク作りでは『目的・情報・思い・ノウハウ』の4つの共有が大切だと教えていただきました。今回はまさに『ノウハウの共有』だったと思います。今後、平成30年に向けて障害者の雇用率が上がり、精神障害者の雇用義務化になることで、ますます精神障害者の定着支援が必要になってきます。嬉しいことではありますが、支援数の増加に伴い、限られたマンパワーで対応していく課題はどの事業所も頭を悩ませている問題だと思います。その中で地域のネットワークは欠かすことができません。今回の就労研は、ネットワーク作りを構築していく新たな第一歩になったと思います。

                        オープナー 本田 美咲

【報告】拡大版多摩就労研究会

オープナー 2017/03/15

平成29年2月24日、年度最後の多摩就労研究会を行いました。
いつもの会場を飛び出し、拡大版として講演・実践発表・フロアとのディスカッションを企画しました

この「就労研」は、各機関の実践者が主体的に参加し、本音で語り互いに切磋琢磨し連携を図ることを目的にしています。
以前、行っていた「就労研」をバージョンアップし今回、多摩地区にある障害者就業・生活支援センター(中ぽつ)3つが協力し、多摩地区の就労支援機関、医療関係者に呼び掛けし年4回程度の定例の研修会をおこなっています。

今回は、いつもより多め、そして議論できるくらいの45名が参加しました。
拡大版のテーマはやはり「精神障害のある人の定着支援」

まず、文京学院大学の松為信雄先生に講演していただきました。先生の幅広い視点で来るべき平成30年をどのように乗り越えていくのか、現状の問題点や今後の課題、支援者に望まれること・問われることを見事に分析し分かりやすく講演いただきました。福祉から雇用の流れを「キャリア」の概念で抑えること、「パラダイム(見方)を変える」ことがこれからとても大事になるというメッセージをいただきました。

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講演と実践報告の間をつなぐキックオフにタラントの野路氏が「精神障害のある人の定着を考える上で定着率の問題に触れ、就労までの流れを図式化したもので説明し、整理して後半が始まりました。

実践報告では大阪精神障害者就労支援ネットワークの金塚たかし氏就労移行支援事業ピアスの高橋しのぶ氏より報告してもらいました。

金塚氏からは、大阪での実践と支援の基本に触れ、雇用定着には信頼関係を作っていくこと・語ることで精神障害のある人は元気になっていくこと・支援者として何故就労支援を取り組むのかを報告いただきました。

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また、高橋氏からは「精神障害者の定着支援からみえるもの」をピアスの利用者で3年以上定着している方の支援量をデータ化し、お話しいただきました。精神障害者の支援の量は年数に関係なく減らない事実は分かっていながらも、衝撃でした。

その後ディスカッションでは信頼関係を築いていくことの大切さ、だからこそできる支援があることなどそれぞれの視点から意見をいただきました。

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今回の懇親会は「講演を通して感じたそれぞれの思いを熱いうちに語り合いたい」と思い会場を変えずにデリバリを頼み、立食形式で行いました。参加者の半数以上の方々にご参加いただき、講演の時間では消化しきれなかった疑問や思いを語り合うことができました。

私は松為先生とお話しさせてもらい、地域ネットワークをつくる上で大切な四つのポイントを教えていただきました。
①目的の共有②情報の共有③思いの共有④ノウハウの共有です。
共通の目的をもって、情報交換をしながら思いを分かち合い、それを実現化するためのノウハウを共有することでネットワークがつくられていくということを教えていただき、感銘を受けました。多摩地域のネットワークを作っていくため定期的に集まっていますが、私自身ネットワークがどう作られるものなのか、またどういったものがネットワークというのかよくわかっていませんでした。そんな中、松為先生のお言葉を聞いて私のなかで漠然としていたものが少し見えてきたように思います。

4つのポイントから考えると今後、多摩就労研で取り入れたいことはノウハウの共有だと感じました。そのために実際の現場で当事者とどう関わっているのか、組織としてどのような取り組みをしているのか、各機関の具体的な事例を伝え合う機会を提案してみたいと思います。多様なニーズへの対応が必要とされている今、当センターだけでは対応できないことも他機関からの知恵を借りることで問題解決への糸口をみつけられるかもしれません。

本田 美咲

「多摩就労ネットワーク連絡合同会議」報告を掲載

研修会 2015/04/13

「就労支援のネットワークと支援の姿を考える」2015

平成27年3月12日、多摩地区の障害者就業・生活支援センターの3センターが連携した初めての合同ネットワーク連絡会議が開催されました。

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実践報告

「地域のネットワークで障害者雇用を進めていく(湘南東部の現場から)」

◎講師
湘南障害者就業・生活支援センター
センター長 
小川 菜江子 氏

神奈川県湘南地域県政総合センター 
商工労働局・障害しごとサポーター
桒原 茂 氏

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私達が就労支援に携わる中で日々取り組み、耳にしている「連携」や「ネットワーク」の理想のひとつではないだろうか思えるチーム支援の取り組みを報告していただきました。
地域のハローワークを軸にして、就労支援機関や福祉施設が集まり、新しい求人情報とそのジョブマッチングを目的としたチーム会議を毎月行っているそうです(開催当初は自発的ランチミーティングだったとか)。
その中で各々の業務についても理解でき、役割分担も考えていけるとのこと。結果、地域の就労支援力を底上げしていくという考え方にも納得でした。

講演

「障害者の就労支援を考える -急増する企業系事業所の現状から見えてくること-」

◎講師
独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園
志賀 利一 氏

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志賀氏の講演では、福祉的就労についての問題点からその歴史を振り返ることから始まり、労働法に則った就労継続支援事業A型については地域の偏在も大きく、様々な視点から明確な数字を基にして、福祉的就労をどう捉えていくのかという提示がされました。労働を提供できない事業所の課題がクローズアップされる中で、平成27年度には就労系事業所の報酬改定があり、新たにサービス体系が見直されることになるとのことでした。

片方で、「就労支援」「定着支援」を支える湘南東部のお二人からは「送り出せばそれだけ定着が必要、一つの事業所だけではカバーしきれない」という課題が出され、志賀氏からは「就業生活を続けていくための継続的支援は必要だが、それを誰が行うのかという課題がある」との話しがありました。
これからのネットワークのベストスタンダードをどう作っていくのか、まだまだ模索は続きます。

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