「緊急発言」天野理事長コメント掲載

法人本部 2016/08/23

考え続ける、ここまでの活動の正当性を信じて発信し続ける

とんでもない世の中になってしまったと、頭を抱えるようなことが多くなった昨今ですが、相模原の事件には本当に驚きました。
報道されて3週間たっても震えがくるような気持ちは一向に収まりません。被害者も加害者も障害者で、19人もの惨殺となればいろいろな立場の人を深く傷つけ、もしかしたら二度と立ち上がれないような思いにさせているのかも知れません。
この中で語られる二律背反的な価値観、病気の開示と匿名性の確保、施設の開放性とそれによるリスク、引き出される自分たちの本音と福祉職員としての理念など立場によって、見方によってさまざまな思いがわきあがるこの問題は、それぞれにがんばってきている人達の神経をも逆なでしています。
それなのにあっという間に世間の関心はオリンピックに移り、またしても風化して消えてゆきそうです。残るは精神障害者は何をするかわからない、恐ろしいという昔ながらの根強い偏見… それが、またしてもじんわり社会に蔓延してゆくのではないかという嫌な予感がします。実際に、会社で同僚の会話に「精神障害者は怖い…」という話が出てきて、暗澹とした気分になった当事者の方もいます。

変わらない非正規雇用と低賃金と人手不足ゆえの重労働、在日の方々へのヘイトスピーチに端を発したネットなどでの暴言や差別発言が、一番弱い立場に向けて噴出するという大きな背景にも、目を向けたいものです。
措置入院や医療のあり方、司法と精神保健の狭間や責任能力という課題にテーマは移りそうですが、この容疑者の幾重にも屈折した存在に対してももっと何かができなかったのかも考えさせられます。
棕櫚亭では今回2度に渡って職員会議を開き、それぞれに深く思うところを一緒に考えました。共通しているのは一昔前にはあった精神障害者差別が、何十年の積み重ねの中でやっと変わってきたのに、それが容易に崩されてしまうのではないかという恐れや、悔しさでした。
その後メンバーの皆さんにも病気をオープンにして働くことや、名前を出して講演することなど自分たちの活動は揺らがないこと、全体としては隔離収容の時代から遠く離れ、多くの人の理解はゆき渡ってきたことなど話しました。
終わらない問題、解決できない課題をたくさん飲み込みながら、考え続けること、ここまできた活動の正当性を信じて、発信し続けることこそ大切な時だと思います。

7月23日の報告会では地域の方がたくさん来てくださいました。(平成27年度「多摩棕櫚亭協会の事業活動報告会及び研修会」が開催 をご覧ください)
地域で生まれ大きくなった私たちです。これからも地域に開かれた多摩棕櫚亭協会でありたいと思います。

社会福祉法人多摩棕櫚亭協会
理事長 天野 聖子

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