『私の緊急状態における支援対応について』塩田由美子 著(論文)


自分自身の希望を主張しながらも、言われたことを反芻し、対話を続けることで成長していった彼女の軌跡
精神医療関係の学会誌では得てして専門化が病気の処遇の方法や困難さについて、あるいは画期的な薬物や治療法、援助法についての論文を発表するのが当たり前になっている。今回、旧知の当時者 塩田由美子さんから、一昨年(平成27年)冬の日本精神科救急学会シンポジウムの内容をまとめた掲載作品『精神科救急第19巻特集8』 が送られてきた。

論文として出版されているのでここでは内容全部を紹介できないが、1999年の初めての措置入院時と2012年再発再入院という体験を通して、病院のあり方や支援の対比、関係性の変化などが簡潔かつわかりやすくまとめられている。
「患者も人間、わかるように説明してもらえること、人として大切に思ってもらえることには誰よりも敏感」
「緊急状態の時、本人を理解している人がそばにいるかいないかではほぼ同じ状態でも状況は大きく変わってくるのではないかと思います」
「患者も入院生活が最悪という人も多いかも知れません、しかし本気で治療に当たってくれる医療従事者、地域に迎え入れてくれる支援者の気持ちにも思いをはせてみてもいいのでは」
等々、時に自分自身の希望を主張しながらも、言われたことを反芻し、対話を続けることで成長していった彼女の軌跡にも注目したい。こうした体験が医療関係者の目に留まる事も大きな喜びである。

それにしても行間ににじむ悔しさや絶望感を抑制の効いた筆致であらわしている彼女の文章力の高さにも改めて感銘を受けた。体験を言語化してゆく当事者が次々出てきた昨今の風潮は喜ばしい限りだが、それを更に昇華し、こんな風な読み応えのある論文に仕上げた彼女に心からの賛辞を送りたい。

社会福祉法人多摩棕櫚亭協会
天野聖子

『私の緊急状態における支援対応について』
塩田由美子(社会福祉法人はらからの家福祉会 支援センタープラッツ) 著

『精神科救急』第19巻 特集8「精神科救急における多機関連携」
日本精神科救急学会


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