「じっくり」という事。~なぜ今、往復書簡なのか?~

法人本部 2017/11/02

「往復書簡の様な事が出来ないだろうか?」こんな事をスタッフの荒木さんに相談したのはまだ暑さが残る頃でした。新体制がスタートして半年が過ぎようとしていた頃の事です。創設世代の熱さはそのまま引き継ぐにしても、「私達なりの外部への発信の仕方はどの様にしていけばいいのか?」そんな事に悩んでいました。併せて、福祉分野に参入してくる民間事業所の広報力に、資本もマンパワーも敵わない中「どの様に対抗していったらいいのだろうか?」という思いもありました。

そんな時に、口について出たのが書き出しの言葉です。今はSNSの時代、スマートフォンが一台あれば世界と繋がる事が出来ます。時間も場所も選ばず、情報伝達も早い、倍々ゲームのように拡散するその広がりが、SNSの魅力なのだと思います。だから、生き馬の目を抜くような現代に、このコミュニケーションツールは爆発的な人気があるのでしょう。

でも、だからあえて「往復書簡」と考えました。「手紙」は一人の人が、ある特定の人に向けて、自分の思いを綴ったもの。そこからは、その人の心の形が見えてきます。SNSの様は速さや、一気に拡散する広がりはありませんが、そこには「じっくり感」があります。常に宿題を抱え、それに答えを迫られる日常の繰り返しは、人の心を手に取って味わう事を後回しにします。

先日、障害者雇用企業支援協会(SASEC)を訪ねました。混迷を極める障害者雇用の現状を、どう読み解けばいいのか?ヒントが欲しくて数々の質問をする私に、諭すように畠山理事がおっしゃった言葉が印象的でした。「障害者雇用は雇用促進を急ぎすぎるばかり、支援者、企業、そして、当事者自身もじっくり育て、育つ事をやめてしまったんでしょうね・・・・」

もしかしたら、今起こっている企業の不祥事などの社会問題は、世の中が「じっくり」をやめてしまった事と関係があるのかもしれません。ただ、この激流のような社会の流れを戻すことは出来ないでしょう。ですから、この流れに乗りつつも、ホームページの中だけでも、一つのテーマに時間をかけて考えていきたいと思いました。

  それを担うのは、櫻井さんと荒木さん、これまた二人がじっくりと練った企画です。両氏なら役者に不足はありません。据えたテーマも、なかなか本質的もので答えが出るのか?とも思いますが、私も二人の手紙を読みながら、時間をかけて一緒に考えていきたいと思います。

(理事長 小林 由美子)

特集/連載 『往復書簡』
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