時事伴奏⑨ ~ニュースと共に考える~

法人本部 2020/01/29

知と行動

社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会

ピアスタッフ 櫻井 博

正月休み(1/2)に病院を訪ねてみた

彼には家族はいない。遠い親戚がいるらしいが、もうしばらく会っていないという。なにか手土産でもと思ってスーパーのお寿司を持参した。病院は、世の正月のお祝いムードとはかけ離れて静けさに包まれていた。

病棟に続く廊下の長いことにあらためて気づかされた。受付の警備員の応対も看護師の対応も以前よりずっと感じのいいものだった。前回のチョコレートの差し入れが問題だったようで、面会時はいっさい飲食の持ち込みは禁止されていた。糖尿病の恐れがあるということで、少しのお寿司ぐらいという、願いも看護師さんの「生ものですから」という一言で一蹴され、食べることは叶わなかった。こちらの喜ぶ顔がみたいという思いが無残にも打ち砕かれた。そんな思いだった。主治医からは「当分退院は見通せない。(冗談交じりに)ここでずっと生活もできる」などと長い入院生活を暗示する言葉もでて驚いて帰宅した。なにかがおかしい。「寝る前に20錠以上服薬しているからみたいだ」と当惑している顔が忘れられない。

 

Eテレで観た番組

翌日偶然テレビのスイッチをいれてこころの時代~宗教・人生~「沈黙は共犯 闘う医師」(Eテレの1月3日1:30~1時間)の番組を観た。

タイトルにある「闘う医師」とはコンゴ民主共和国の婦人科男性医師で、2018年ノーベル平和賞を取ったデニス・ムクウェゲという人物だ。彼はレイプ(武器)がいかに人々を恐れさせ共同体を壊していくかを詳しく語っていた。この武器を使って、国の利益である自然を奪っていく論理を展開し、武器が人々を共同体から去らせ、自然の富を奪って、文明の搾取が行なわれている現実を語っていた。彼は、知恵、知識は「行動してはじめて意味のあるものになる」という理論を展開し、知と行動を起こすことの重要性を熱く語っていた。

「沈黙は共犯」というタイトルは黙っていることは闘うことの正反対にあることを語り、「今こそ行動を」という闘う意思を示す態度のもつ重要性を世間に問うていた。

知らないことを知っているという「無知の知」を提唱したのはギリシアのソクラテスだが、「知って行動する」というほうが私には腑に落ちる。

 

医療連携と行動

翻って病院の話に戻る。寝る前に23錠服薬しているという彼に退院という道はあるのだろうか。私ができることはなんだろうか。退院は彼の望むものなのか。頭に到来するあれこれには結論がでない。でもこのテレビを見た後では、沈黙はできないそんなことを考えた。

退院という言わば自由への扉を開ける役割といえばおこがましい。

「医師がいて病院があれば安全なのに何故?病院にいれば安心なのに。」

ふと思ったそんな考えを私はすぐに打ち消した。私も10年以上前、病院から退院した時に、地域がこんなに自由で楽しいものとは知らなかった。そんな気持ちをもう一度彼にも味わってほしい。たったそれだけのことである。

確かに病院は病気を治すために自由を制限するところである。でも精神障害の場合、病気が治る線引きが難しいなか、主治医が可能な限り退院を認めることを前提に、地域と医療の連携重要性が問われることだと思う。

このような体験と知識を得て、「地域でできる精一杯の仕事をやりたい、そのために私自身もう一歩踏み出したい」と思った新年だった。

当事者スタッフである私は、今年も「時事伴奏」の中で、不定期にでも思いを発信していきたいと思っています。よろしくお願いします。

時事伴奏⑧ ~番外編・名古屋 愛知美術館へ~

法人本部 2019/12/27
愛知美術館へ ~小堀令子先生の作品を訪ねて名古屋に発つ~

 社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会

ピアスタッフ 櫻井 博

展示期間は2019年12月15日で終了してしまいましたが、棕櫚亭Ⅰの絵画の講師をお願いしている小堀令子先生の絵を鑑賞する為、12月8日に日帰りで愛知県名古屋市まで行ってきました。この企画展は 「地球 爆」 とテーマが名づけられ、その中で小堀先生はとてもエネルギッシュな作品を発表されていました。

10人の画家による「地球・爆」展

「アースアタック」というのが先生のずーっと大事にしてきたテーマで、9月5日から開かれた六本木ストライプハウスギャラリーでも「Black Hole&Earth Attack」とご自身の作品を発表されています。この時は棕櫚亭の方々のライブも催されたようです。(その模様は棕櫚亭ホームページでみることができます。)

名古屋企画展のパンフレットから抜粋した文をご紹介させていただきます。

全長200メートルを超える「反・戦争・絵画」を目撃せよ。

岡本信次郎を中心とした10人の画家による「地球・爆」展が愛知県美術館で開催

本プロジェクトは、2001年のアメリカ・同時多発テロ事件に呼応した岡本と伊坂の呼びかけを発端とするもの。メンバーで「共作」するというアイデアのもと07年から本画の制作を開始し、13年に完成した大1番は同年のあいちトリエンナーレで紹介され

無題た。本店では11組・150点のパネルで構成された。全長200メートルを超える連作の完成版をみることができる。(中略)20世紀の戦争が人類にもたらしたものとは何か。という問いに戦前・戦後の世代が向き合って誕生した「地球・爆」プロジェクト。その約18年を経て完成した「反・戦争・絵画」を体験してほしい。

10人の画家:岡本信治郎、伊坂義夫、市川義一、大坪美穂、小堀令子、清水洋子、白井美穂、松本旻、山口啓介、ワンシュウイエ

小堀先生の願い

絵画から何かを得るのは自由だと思います。今回は学芸員の方の1時間ぐらいの制作秘話も聞かれ、ますます立体的に先生の絵が感じられました。一枚のキャンバスに2~3人で作画をする手法などは他では見られないことです。作品を大きく描くまえに小さなデッサンを用意し、それを大きく描く手法を取り入れて作品にしていった過程を想像すると、いかに作品を仕上げていく過程が大変なのかということが伺えます。

私が小堀先生の絵から感じるのは、とてつもないエネルギーの力と恒久的な反戦、平和への願いです。ここに先生の絵と対峙していると時間の経過も忘れてしまいます。来年どのような作品がみられるか今から楽しみにしています。

最後に ~今年もありがとうございました~

今年も「時事伴奏」を読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。

新しき一年が、皆さんにとって良いよい年となりますように。

時事伴奏⑦ ~ニュースとともに考える~

法人本部 2019/11/05
ディ合宿(法人全体職員会議)を終えて ―発信しつづける棕櫚亭を目指して―

社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会

ピアスタッフ 櫻井 博

短い秋、一気に寒さが迫ってきました。いかがお過ごしでしょうか?久しぶりの時事伴奏であります。

多摩棕櫚亭協会では年2回「デイ合宿」という、半期活動報告を全体職員会の中で行なっています。その模様について私なりに見聞きし、感じたことを報告したいと思います。場所はピアスの2階で、大きな輪のように机を並べて30名ほどの職員が一堂に会するものです。

デイ合宿とは

繰り返しになりますが、今回は令和元年前期における合同職員会議です。棕櫚亭の4事業所のほとんどの職員が集まり、午後1時から5時まで討論しあいます。以前は一日中話し合われたことから「合宿」と名付けられたと聞いています。事業計画に基づいた進捗状況の報告や現状の課題などを各施設20分ほどで報告し、他事業所からの質疑に応答するかたちをとります。

小林理事長が言う発信とは

私たちが活動する小さな国立に住む人でさえ棕櫚亭を知らない人もいるという報告がありました。テレビでピアスの現場が紹介されたり、理事長小林さんのインタビューが新聞で取り上げられ、多方面からホームページにアクセスがあったと報告されました。

ホームページの性格上、常に新しいことを発信しなければならないとも話されました。

棕櫚亭が発信し続けるあるいはその姿勢の重要性と自分達の活動を社会に発信しつづける棕櫚亭でありたいという理事長の意見でした。

棕櫚亭の置かれている現実

国務大臣が「多様性を認める社会」という言葉を使い始めるように、時代も大きな転換点にあります。重度障害者の議員の方が国会で発言し、合理的な配慮がされる時代です。私も棕櫚亭と出会ったころ、障害者という響きに違和感、もっといえば嫌悪感を感じる時期もありました。それは自分が障害者であるという裏返しでした。障害があると言われることへの偏見からくるものではないかと今では思いますが。でも、今の時代は障害をオープンにして働く、その人なりの働き方に注目が集まっています。まだまだ棕櫚亭の認知度は高くないです。地域の人が知らないという現状をどうとらえたらいいでしょうか。そのため棕櫚亭では地域にすこしでも知ってもらえるよう、地域貢献として「食」の部分で働きかけをはじめました。具体的には子ども食堂への安価な食事提供などがそれに当ります。地域との接触を通して棕櫚亭を知ってもらう努力を惜しみなくしています。自立支援協議会などの行政の会議に出席して他団体への周知にも努めています。

今回の台風19号に関連して

ある職員から今回のような未曾有の豪雨災害の時に、ピアスがどのタイミングでどういうふうに「福祉避難所」として開設されるのかという質問がありました。市の会議に出ていた職員からは明確な回答が得られなかったということでした。メンバーさんの中には実際、近くの指定されている場所に避難して怖い思いをされた方もいらっしゃったようです。例えば台風19号の上陸の際に各地で避難所が人でいっぱいになり、次なる避難所に移動を余儀なくされたかたもいたという現状を考えると、これからの避難所の姿を検証する必要性がある感じがしました。

最後に

将棋の世界では、一手打ったその先にいろいろな打ちてがうかぶほど有利とされています。つまり選択肢が多いほうがその先にある目標が広がり、次の一手につながるということなのだと思います。そういう意味では、地域の精神障害のある方が棕櫚亭のフィールドを経ていただけると、幸せ実現につながるように感じました。勿論その為には顔の見える関係を増やし、様々な面で棕櫚亭を知ってもらうことが大切だと感じました。

 

 

【感謝】メンバーさんへ~出版パーティーを終えて

法人本部 2019/07/19

出版記念パーティー(祝賀会)を主催してくれたメンバーさん、

参加してくれたメンバーさん、これまで出会ったメンバーさんへ

社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会

前理事長 天野 聖子

みなさん本当にありがとう。久しぶりの人も、もしかしたら現職時代の私を知らない人もたくさん集まってくれました。それだけでもう嬉しい日でした。

この祝賀会で行われたことの数々は一週間経ったいまでも目に焼き付いています。

イベントで行なわれた「ポップ賞って何?」(※出版本にかっこいいポップをつける企画)という疑問を、大きな盛り上がりやどよめきに持って行く力は名司会者青木さんの真骨頂ですね。そして桜井さん&織田さんの進行も話も、君ちゃんの乾杯や意外な短歌も、温かくて嬉しかった。座談会は長い長い付き合いの福島さんや芳賀さんに加え、最近のOB植岡さんと堀井さんの組み合わせで見た目も新鮮、新旧世代が混じり合う厚みが感じられたし、本当にみんな役者ですね。一人一人の違う感想がまた率直で、中身の濃い展開でしたね。その読込の深さにも感心しました。終了後、感想を送ってくれた村田さんの文章はどの書評にも負けない深みがあってこれにも感動しました。

写真 106

「ありがとう。」

 

イベントで歌ってくれたなびぃのお二人も素晴らしかった。後ろの北村さん中野さんの演奏にもささえられて、歌声が会場いっぱいに広がってしみじみとした気持ちになりました。

力強い言葉を持つたくさんのメンバー達とそれを受け止める開かれた場である棕櫚亭、このハーモニーの絶妙さに心が震えます。こんなに成長して来た人達の心のひだに精神医療の歴史や無念だった命が入り込んで、ま66711588_2862807163794428_6126195738738163712_nさにバトンは受け継がれたのだと感じました。「就労支援」だからって別の道に行ったわけではない、希望の道につながっている。そして、古きあの精神病院で傷つき、希望を失ない亡くなっていった彼らの思いや大きな歴史をこの時代で多くの人達が受け継いでくれたという事実。今ここでつながった道が目の前に現れたような気がしました。

これが「いつかきっと…」の流れにつながった、そしてやってきたことは間違っていないという しのぶさん。メンバーさんは棕櫚亭にとって大きな財産だという 小林さん。職員もみんな嬉しそうでこの場が光り輝いて見えました。

前夜遅くまでリハーサルをしていたと聞きました。どんなステージも裏方や担当といった担当は大変ですし、何よりも準備や心がけは何かに生かされるものです。

最後に、お疲れ様でした。そして本当にありがとう。

心からこの本を出版して良かったと感じました。

【連載】時事伴奏⑥ ~ニュースと共に考える~

法人本部 2019/06/19

「嫌な報道が増える今~できるだけ冷静になって対応したい~」

社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会

ピアスタッフ 櫻井 博

令和の時代が始まりました。平成の時代にも増して「思いもかけない事件」報道が多いような気がするのは私だけではないと思います。

先日、大阪府吹田市で拳銃強奪事件が起こり犯人が逮捕されました。NHKの報道では犯人は「私のやったことではありません。私が思うのは病気がひどくなったせいです。周りの人がひどくなったせいです」と供述し、容疑を否認している(18日現在)とありました。精神障害者手帳をもっているとの報道や勤め先は障害者雇用だとの報道もありました。

私は棕櫚亭で働き始めて6年たちますが、このような報道にショックを受けました。また働いている仲間も少なからず気になった事件だと思います。

ここで私たちが考えなければならないことは、「報道に冷静に対応しましょう」ということです。マスコミ報道は精神障害と犯罪を結びつけ事件を大きく取りあげがちだからです。この犯人は犯行にあたり衣服を着替えたり、拳銃を奪うという計画性を報道から感じます。そういう意味では妄想や幻聴が「やれ」といったとしても病気にある人はやらないだろうし(もし行った場合大変なことになることを知っているから)、それを病気がひどくなったからという話を到底私は受け入れられません。

今後の捜査の過程で心神喪失状態にあったかどうか、精神鑑定になれば精神科医師の専門家の領域になるかと思います。しかし一部マスコミの「精神障害者は危険だ」といわんばかりの論調には今はつとめて冷静に対応することが大切かと思います。

不安ならば思いを聞いてもらうことも孤立に陥らない秘訣だと思います。

また障害者を雇う側にもこの事件はまれなケースだということを認識して欲しいと思います。

津久井やまゆり園の事件からもうすぐ3年を迎えようとしています。

私は先日同僚から辺見庸の「月」という本をかりてよみました。小説というかたちでやまゆり園の事月と雲件を取り上げたと思われるこの作品は、容疑者の犯行の理由が精神の病というより、自分の間違った思想、単純な思考回路によると筆者に提示され、私は深く共感しました。テレビや新聞のマスを対象にしている報道は時に大衆を迎合させるポピュリズムに繋がっていきます。このような報道がなされた時でも、われわれは恐れることなく堂々と自分の生き方を続ければよいのではないかと私は思います。

 

新年度にあたり ~お祝いムードの後ろに透けて見えるもの~

法人本部 2019/04/10

平成30年度が終わり、31年度が始まりました。そしてこの平成も後一ヶ月で幕を閉じ、令和と名付けられた新しい時代がやって来ます。これで棕櫚亭の活動も昭和、平成、令和と三時代を跨ぐことになります。 今、世の中は新年号決定でお祝いムード一色です。しかし、福祉の現場から社会を見る限り、おおよそそこからはかけ離れた現実が見えてきます。

平成30年度は障害者総合支援法や障害者雇用促進法の改正、さらには報酬単価の見直し等様々な外部状況に揺るがされた年でした。 棕櫚亭でも、ピアスで就労定着支援事業を、なびぃでは自立生活援助事業を新たに展開し、オープナーでも精神障害者の職場定着のための新規二事業(「医療機関・就労支援機関連携モデル事」「精神障害者就労定着支援連絡会事業」)を受託しました。これらの事業を通し昨年度は今まで以上にたくさんの当事者の方や、関係機関の方に出会う事が出来ました。現場もいろいろ苦労はありますが、非常に盛況で多忙を極めつつも職員全員で頑張り切った1年でもありました。そこは確かにそうなのです。でもどうしても拭えない思い…

「本当に困っている人に私達は出会えているのか?」

それはどんな時代でも、自分達の支援が全ての人に届く訳ではありません。しかし、それを承知の上でも、その届かない感覚は年々広がる様に感じています。 今、福祉現場は報酬単価のという見えない鎖でがんじがらめにされ、そことの格闘でエネルギーを使い果たしているのが現状です。一方、経済の停滞や少子高齢化を背景に、社会問題はますます複雑化、深刻化しています。タイトになる福祉現場と、一見の豊かさで覆い隠されていく社会問題、出会わなければならない二者の溝はさらに深くなっていく様に感じてなりません。どんどん掻き消されて行く声に、私たちはどうコミットメントしていくのか?お祝いムードに浮かれる世の中を見ながら、その後ろに透けて見える本当の社会の姿を見続けて行かなければと思いを新たにしたところです。取材・メディア掲載/講演

今年は、棕櫚亭の30年をまとめた天野聖子著「精神障害のある人の就労定着支援~当事者の希望からうまれた技法~」が5月28日に発売されます。ここには正に、社会にコミットメントし続けて来た棕櫚亭の足跡が記されています。ぜひ皆さんご一読下さい。 そして今年度も棕櫚亭をどうぞよろしくお願いいたします。

理事長 小林 由美子

当法人ホームページ www.shuro.jp で近日中に

新刊予約ページをOPEN予定です!

ホームページのチェックをお忘れなく!

 

 

【連載】時事伴奏⑤~ニュースと共に考える(新年号)

法人本部 2019/01/10

新年明けましておめでとうございます。

今年は4月に新元号が発表され、新しい元号が5月から採用されるようです。私などは昭和・平成に加えて新しい元号までの3つの時代を生きることになるわけですから、自分が明治生まれの人達に抱いた感慨のようなもの、まぁ例えば「なんてこの人達は長生きなんだ」などという感情を、私に対して若い人達からはももたれるのかもしれませんね。

さて、昨年末に「ある風景」対談を行ないましたが、皆さんにも読んでいただけたでしょうか?対談の後半で「棕櫚亭でも引き続き、人材育成の必要性があり、課題である」と小林理事長が話されていましたが、この言葉が心に少し引っかかったまま正月休みに突入しました。

正月のテレビ番組は、紅白やお笑いなどが目白押しですが、先ほどのような考えが頭にあったものですから、ついつい人材育成にまつわるあるimages番組を観ましたので少し紹介したいと思います。

それは、「ひとモノガタリ」というNHKの番組で何日間か連続で様々な人を取り上げる番組です。一日目は「左官業」という人の定着率が極めて低い業種の会社で、「どうしたらこの会社で長く働いてもらえるか?」という取り組みを始めたという話でした。この会社では新人に一対一でつき、指導するということでした。いつも会社に遅刻して、将来に展望も描けないようなある若者が、お客さんの褒められた言葉を機に変わっていき、いずれかは一人で現場を任されるようになるという展望がみえてきてすばらしいと感じました。話しの要点は、この言わば「会社の問題児」をどのように育成するかという積極的人材作りにあり、その苦悩がよく描かれていることです。左官の親方が、若い人を手にもてあましながらも不器用に愛情を注ぐ姿に感動しました。

「ひとモノガタリ」の二日目は、卓球の平野未宇選手を育てた母親の話です。彼女の開いている卓球教室で、試合の時にみんなが一致団結して応援しなかったことに腹を立てて、子供達を怒ってしまったエピソードを取り上げていました。平野選手の母は、その後よくよく考えて、団結して応援しない状況をつくっていたのは自分で、その自分に対するふがいなさに実は腹を立てていたのだと気がつき、反省していたのが印象に残りました。

この二日間の番組では、人を育てる難しさや工夫が語られていましたが、少子化の中で人材育成にきちんと取り組まなければ、結局どこの業界もやがて先細りしていく危機感のようなものを私は感じました。

そんな中、私自身が一番興味を持ったのは、怒らない指導、共感の指導を学ぶことができたことです。

アドラーという心理学者の言う、その人の目で物事をみて感じて寄り添い、共感するという思想がそこに流れていることも感じました。アドラーは著書「嫌われる勇気」で有名になりましたが、続編「幸せになる勇気」ではこの共感することの大切さが書かれています。人に思いを寄せるときに、自分の目ではなく、その人の目から見える風景や心情を大切にすることは、小林理事長のおっしゃった、棕櫚亭の大切にしているパートナーシップを理解する上で必要不可欠かとも思いました。

つらつらと筆を走らせましたが、昨年末に小林理事長と語った「人材育成」について、年末年始のテレビ番組から考えてみました。

ところで、冬休み期間に、仕事のことを考える私ってやっぱり、昭和生まれの古いタイプの仕事人間なのでしょうか(笑)

新年の挨拶方々、文章を書き綴ってみましたが、時事伴奏を今年もよろしくお願いします。

ピアスタッフ 櫻井 博

【連載】時事伴奏④~ニュースと共に考える

そのほか 2018/12/21

平成最後の年は、多くの天災が起きました。6月は西日本を襲った豪雨、9月6日には北海道でM6.7の北海道胆振東部地震といずれも大規模なものでした。

先日棕櫚亭では施設ごとに防災訓練を行ないました。その中で、スタッフから「家族でどこに集まるか事前に決めておきましょう」というアドバイスがでました。確かに家族皆ばらばらでは安否の確認がしようがないと思いました。私も就業後、自宅近隣の集合場所を確認しましたが、公園やら中学や小学校など避難場所に指定されそうな場所が等距離にあり、「いったい避難場所はどこだろうか?」と、改めて私も家族も知らず、確認していなかったことに愕然としました。

「震災(災害)は忘れた頃にやってくる」と、よく母に言われましたが、現在では震災は、次々に起こり日常生活ととなり合わせという意識を多くの人がもっていると思います。本当に次々と日本各地で起こりうるので、全く他人事とは思えません。

最近私は阪神淡路大震災の真実を検証した「震度7(NHK出版)」という本を読みました。阪神淡路大震災は都市型大地震と言われ、私たちの住む東京という街に大地震が発生した場合、私たちがどう乗り超えるかのヒントになると考えたからです。この本の内容に触れながら、私の考えを少しお伝えしたいと考えています。

尚、震災に対する棕櫚亭の取り組みを本部の災害担当で主任北村さんより伺いましたので、併せて最後に紹介したいと思います。

5036人の犠牲者がでた※1「死体検案書」のリストを調べるといろいろなことが見えてくる。犠牲者が集中するのは全壊した家屋。家屋の下敷きになるなどして、およそ4000人が亡くなっていた。多くは瞬間的な死を意味する「圧死」ではなく、「窒息死」だった。

※1「死体検案書」とは人が亡くなった時、法律で作成が義務づけられている文書で、医師が遺体の状態を直接調べ死因や亡くなった場所、死亡時刻などを詳細に記入した文書。窒息の原因は胸や腹の上に、重量物、例えば柱や梁などが載り、横隔膜や肺の動きが止められ呼吸ができなくなる。「当たり所」次第で生死の運命が決まる耐震補充など、事前の備えが何より大切。

(中略)

地震による窒息死の悲劇を防ぐ確実な方法はある。「建物の耐震化」だ。東日本大震災にもあったが、※2通電火災も死因の大きな原因になる。

※2「通電火災」とは電気の復旧とともに電気製品から出火する現象のこと。

この本を読む以前になるのですが、私の自宅も半世紀近く住んでいるので、耐震工事を行ないました。この工事を行う前に行った診断では「この家は震度7では倒壊のおそれがある」と言われました。周りにある住宅は新築で鉄筋ですが、私の家は木造でしたので、基礎の部分からやることになりました。

工事の途中見学に行きましたが、すじかいを入れる為に壊した家屋をみると、いろいろ困ったこともわかりました。例えば柱がないため、中央がゆがんでいるとかです。

木と木の間に留め具をいれたり、コンクリートを流し込む大掛かりな工事になりました。今年の末には終了する予定です。

再び、「震度7」の一部を紹介させていただきます。

日頃の「暮らし方」や「住まい方」に気を配ることも欠かせない。(徳島大学)西村明儒教授は次への備えを確実にしていくことが、生き残った者の責務だ。

防災という意識を強くもった今年一年でした。過去を振り返って、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などに代表される大震災を経てきたわれわれに今できることは震災に「備える」ということであり、教訓から学んだ者の責務だと考えました。

皆さんも暮れに向け、今一度災害に対する備え(例えば避難場所や備品等)を確認してみてはいかがでしょうか。

さて最後に、法人本部主任北村さんからいただいたメッセージを読んでみてください。

今年の5月に国立市防災安全課の方からお誘いをいただき、震災後の帰宅困難を想定した宿泊訓練に参加してきました。炊き出しや救援物資の準備、段ボールを使ったパーソナルスペースの確保などを行い、実際に小学校の体育館で一晩泊りました。消防署の方も来ていて印象的だったお話しは「倒壊の恐れがない場合、地震で家具が散乱していても自宅で過ごせるようでしたら、自宅で過ごすことをおすすめする」と、言われたことです。

その理由は避難所の生活が長くなればなるほど疲労やストレスがたまるからです。避難所のほうが安心できるように思いますが、普段自分が目にしている見慣れたものに囲まれている環境のほうが安心感をえられるということでした。

家庭では少なくてもライフライン復旧まで自宅で過ごすことができるぐらい、最低限のできる準備をしておくことが大切だと感じました。

震災はいつどこで起きるかわかりません。家が倒壊していなくても帰宅困難になる可能性は十分にあります。

棕櫚亭も宿泊を想定して、食料品や簡易トイレ、毛布などの災害用備品を用意しています。

すこしでも混乱が避けられるように防災マニュアルも完備しています。順次更新もしています。またブロック塀の安全点検(6月に起きた大阪での地震により、小学校においてプールのブロック塀が倒壊し、その塀に挟まれて女子児童が亡くなられた事故をうけ)家具転倒防止など、災害用備品以外の取り組みも行っています。

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去りゆく平成最後の年に選ばれた「災」の文字に別れを告げ、新年を迎えたいと思います。少し早いですが皆さんも良い年をお迎えください。

 

今年一年時事伴奏にお付き合いいただき本当にありがとうございました。

ピアスタッフ 櫻井 博

(了)

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