あさやけ作業所の伊藤善尚さんが来所されました

法人本部 2016/09/29

棕櫚亭には毎日多くのお客様が見えますが、時にとても懐かしい人が、顔を出してくれることもあります。今日は利用者のモニタリングに来たあさやけ作業所の伊藤善尚さんとピアスのお弁当を食べました。この道40年の方なので、昔話に花が咲きました。共同作業所つくりに情熱を燃やしたけれど、大きな文脈から見たらどういうものだったのだろう、これから福祉はどんな形になるのだろうなど話はつきません。いろいろな話の中で改めて見えるものもあるようで、あっという間の1時間でした。(天野)

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相模原殺傷事件に対するアピール行動に参加しました

法人本部 2016/09/27

9月26日(月)「相模原事件に対するアピール行動」が参議院議員会館及び日比谷公園周辺で行なわれました。多摩棕櫚亭協会からも8名の職員が参加しました。途中、シュロの会(家族会)の植松さんとも合流することができました。

行動でのアピールポイントは4点で、以下のとおりです。

①19人ひとり一人に思いを馳せ、追悼する。
②「障害者はいなくなればいい」存在ではない。
③措置入院の強化、施設や病院の閉鎖性を高めることに抗議する。
④障害の有無によって分け隔てられないインクルーシブな社会をつくる。地域生活支援の飛躍的拡充を求める。

多摩棕櫚亭協会は「相模原殺傷事件」について、これからも継続的に事件について見聞を深めながら、いろんな切り口で考え、皆で知恵を出しながら、発言していきたいと考えています。

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(参加した職員の声)

棕櫚亭でもこの事件について、メンバーの方々も含め、自分の思いを語り、忌憚のない意見交換をすることが大切なのではないかと感じた。自分の障害について考えながら魂の通った対話を通じて、社会を皆で支え・支えあうとする姿勢や実感を得るというプロセスが改めて大切だと思った。そういう意味でも今回のアピール行動は、議論の場ではなく、対話集会だったことがよかったと思う。(櫻井)

様々な障害者がこの事件については本当に発言したい、訴えたいという思いで集まっていました。立場や意見は様々だけれど、とにかく障害があることで排除しないで、多様性を認める社会にしようという思いは一つだと感じました。(天野)

いろいろな立場によって、捉え方や意見の違いがあるということを実感しました。また、施設サービスのあり方、匿名性、建て替えのことなど今まで自分があまり深く考えていなかったテーマがあることも学びになりました。「命の価値」というテーマについても、「そもそも命が価値というものの生みの親だから」という捉え方にもなるほどと思いました。この事件を、社会全体の問題、そして、社会を形作る一人一人の問題と考える人がたくさんいることに少しほっとし、わたしも、自分の中にもある暗闇から目を背けないでいこうと強く思っています。(伊藤)

今回参加するにあたってプラカードを作ったのですが、掲げたいメッセージを考えながら、本当にこの事件は多くのテーマを含んでいることを改めて実感しました。とても一言では収まらず、結局は、参加できなかった職員の想いも含め4つのメッセージを背負って歩きました。
今、多くの雑誌などで事件の特集が組まれています。追悼集会にて多様な団体や立場の人間が一同に集い、この出来事が抱える様々な側面に対する想いを語り合ったことに意義があり、これだけの議論のきっかけを与えてくれた事件を決して風化させてはならない、我々は考え続けなければならないと、痛切に感じました。         (尾崎)

今回のアピール行動に参加して感じたことは、自分が一面的にしか物事を見ていないということです。山ゆり園の施設の建て替えについても然り、「障がい者はいなくなればいい」という考えに対して、「それは間違っている」というだけでなく、その考えに正面から向き合って議論を深めていくことが大切なのではと感じました。それを実行するのはとても難しいことですが、自分の身近なところから始められたらと思います。  (工藤)

集会に参加して、いかに今回の事件が多くの人達にショックを与えたか、偏見を持つ人達がいまだに多い事をまのあたりにしました。又私達が、進めてきた事と反対の方向へ進もうとする動きも出てきている事も知り、歩みを止めず、ここで自分も負けないように、職員として、一個人として、常に何かできる事は無いのか?ということを考えていかなければならないと強く感じました。(馬川)

今回参加して、この事件が国や当事者、家族と多くの人に与えた影響の大きさを感じました。この悲しい事件を「ただ悲しい」と思うだけではなく、悲しみから障害を持った方々のこれからを変えたい・変えていかなければという強い決意の声を直接聞くことができ、改めて自分にできることは何なのかを問うきっかけになりました。(本田)

いろいろな立場や背景の方の話が聞けて、まさに多様な場でした。熊谷さんという方の、「障害者は価値のない存在では無くて、価値を生む母なのだ」(たしかそんな話でした)という言葉が心に残りました。
アピール行動は、大きな声が出せて楽しかったです。始まったら、アッと言う間でした。(田村)

子どもの育ち・自立を考える「ワークショップ」参加して来ました

法人本部 2016/09/23

国立市内には案外多くの組織、団体があって、子供の貧困や経済的困窮者、就職できない、外出できない人達への支援をそれぞれの切り口で実践しています。今日は公民館とNHK学園の共催の(子供の育ち・若者の自立を支えるつながり)というワークショップに参加しました。50名くらいの参加者でしたがグループを回って喋り、自然に知り合いになってゆくワールドカフェはじめて体験です。個性豊かな団体の横のつながりというのは永遠の課題だとのことですが、小さな団体がいくつか集まって実践でコラボしてゆく、それがあちこちにできれば、もっと住みやすい地域になってゆくかも・・最近始まった公民館の学習支援室にピアスのお弁当が届く、配達は地域の民生委員や保護司の方、という組み合わせは大事な視点だと改めて思いました。

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青梅の家族会で当事者スタッフが講演しました

法人本部 2016/09/22

9月17日、青梅の家族会「ほっと・スマイル」の定例会に、シュロ亭のピア(当事者)スタッフ櫻井博さんと共に参加してきた。当日は多摩棕櫚亭協会のご紹介もさせて頂いたが、メインディッシュは何と言っても櫻井さんのお話し。今回は家族会のお誘いと言う事もあり、いつもの体験談に加えてご両親とのやり取りを、時には当日お二人から貰ったお手紙を読み上げながらお話しされた。正に渾身の作!と言う感じだった。ご本人曰く「当時の事を思い出すのは今でも辛いけど、ご家族には誤魔化してはいけないと思って…」と。彼の誠実な人柄が覗く。その思いはご家族に届き、会場は全員の周波数がピタリとあった感じ、何か「双方の橋が渡った!」瞬間に居合わせた感じだった。私も感動し涙を流したものの、実は私が彼と出会った10年なんて物事がうまく回りだした10年なんだと思い知らされた。それまでに彼とご両親との間には、たくさんの葛藤、争い、すれ違いがあった事を彼の話は物語る。「ご家族も当事者」とはよく言うが、正にそれを実感した瞬間だった。会場のご家族も、彼の話に後押しされるように、涙ながらに様々な思いを語られた。中には「櫻井さんの話には感動したが、今でも娘を医療保護入院をさせてしまった傷が癒えない」と、切々と語るご家族もいた。「ご家族を支えるサービスがこの国は少なすぎる…」そんなことも痛感した。話の最後を櫻井さんはこんな言葉で締めくくった。「病気になって僕も途方にくれたが、今にして思えば父も母も同じだったんだと思う。精神病になると言う事は、今まで引いてきたレールをもう一度引き直す様なもの、だから回復までに時間がかかるんですよ」と…深くて重い言葉だった。

この日の司会は中住さん、この貴重な機会をくれた方だ。東京青梅病院を退職し、舞台を地域に変えて活躍されている。今はひこばえの家の理事長を始め、東京つくし会の理事、この家族会の世話人と病院時代よりかえって忙しいそうだ。何とも頼もしい。

いい時間を過ごした。櫻井さん、中住さん、そして「ほっと・スマイル」のご家族の皆さん、本当にありがとうございました!

報告者 小林 由美子

ウェブサイトを全面リニューアルしました

法人本部 2016/09/07

ウェブサイト・リニューアル

いつも多摩棕櫚亭協会のホームページをご覧いただきありがとうございます。

おかげさまで多くの方に、お問い合わせやご意見をいただき職員一同感謝しております。

このたび当サイトを一新、より視認性・デザイン性の高いものへとリニューアルいたしました。

また、追加機能としてスマートフォン対応も行なっています。

今後引き続き、多摩棕櫚亭協会及び新しいサイトをご愛顧いただければ幸いです。

 

 

「緊急発言」天野理事長コメント掲載

法人本部 2016/08/23

考え続ける、ここまでの活動の正当性を信じて発信し続ける

とんでもない世の中になってしまったと、頭を抱えるようなことが多くなった昨今ですが、相模原の事件には本当に驚きました。
報道されて3週間たっても震えがくるような気持ちは一向に収まりません。被害者も加害者も障害者で、19人もの惨殺となればいろいろな立場の人を深く傷つけ、もしかしたら二度と立ち上がれないような思いにさせているのかも知れません。
この中で語られる二律背反的な価値観、病気の開示と匿名性の確保、施設の開放性とそれによるリスク、引き出される自分たちの本音と福祉職員としての理念など立場によって、見方によってさまざまな思いがわきあがるこの問題は、それぞれにがんばってきている人達の神経をも逆なでしています。
それなのにあっという間に世間の関心はオリンピックに移り、またしても風化して消えてゆきそうです。残るは精神障害者は何をするかわからない、恐ろしいという昔ながらの根強い偏見… それが、またしてもじんわり社会に蔓延してゆくのではないかという嫌な予感がします。実際に、会社で同僚の会話に「精神障害者は怖い…」という話が出てきて、暗澹とした気分になった当事者の方もいます。

変わらない非正規雇用と低賃金と人手不足ゆえの重労働、在日の方々へのヘイトスピーチに端を発したネットなどでの暴言や差別発言が、一番弱い立場に向けて噴出するという大きな背景にも、目を向けたいものです。
措置入院や医療のあり方、司法と精神保健の狭間や責任能力という課題にテーマは移りそうですが、この容疑者の幾重にも屈折した存在に対してももっと何かができなかったのかも考えさせられます。
棕櫚亭では今回2度に渡って職員会議を開き、それぞれに深く思うところを一緒に考えました。共通しているのは一昔前にはあった精神障害者差別が、何十年の積み重ねの中でやっと変わってきたのに、それが容易に崩されてしまうのではないかという恐れや、悔しさでした。
その後メンバーの皆さんにも病気をオープンにして働くことや、名前を出して講演することなど自分たちの活動は揺らがないこと、全体としては隔離収容の時代から遠く離れ、多くの人の理解はゆき渡ってきたことなど話しました。
終わらない問題、解決できない課題をたくさん飲み込みながら、考え続けること、ここまできた活動の正当性を信じて、発信し続けることこそ大切な時だと思います。

7月23日の報告会では地域の方がたくさん来てくださいました。(平成27年度「多摩棕櫚亭協会の事業活動報告会及び研修会」が開催 をご覧ください)
地域で生まれ大きくなった私たちです。これからも地域に開かれた多摩棕櫚亭協会でありたいと思います。

社会福祉法人多摩棕櫚亭協会
理事長 天野 聖子

「沖縄タウンミーティング報告書」を掲載

研修会 2016/07/14

平成28年7月1日(金)から2日(土)にかけて、全国就労移行支援事業所連絡協議会(当法人が副代表をしています)が主催の沖縄県浦添市で行われた、暑く・熱い「第五回 就労移行支援タウンミーティング in OKINAWA」参加してきました。

詳しくはこちらから »

「年の瀬に思うこと」天野理事長コメント掲載

法人本部 2015/12/28

世代交代が進む現場では
若い職員達がいろいろなことを吸収して
大きく伸びようとしています

1年はあっという間ですが平成27年も実に足早に通り過ぎていったという感じがします。
思えばその前の年、大規模修繕を終え、綺麗になったピアスで、6年ぶりの活動報告会を行ったのが6月です。自立支援法正以来追い立てられるような流れの中、地域の諸問題からかけ離れてきたのではないか。ただの就労支援事業所になってしまっているのではないか、そんな思いでいたところ、今度は社会福祉応の改正が出てきて、社会福祉法人の体質改善と共に地域貢献が取り上げられ、私達の心配も先どりされる時代であることに臍をかむ思いをしたところです。
更に国の規制緩和による営利法人の参入が精神障害者のサービスに及んでまさに(市場原理主義という言う一匹の妖怪が現代の先進資本主義を跋扈している)という状況になり、個別支援最先端のピアスも影響を受けました。10人が就職した9月以降は珍しくピアスの利用者数が伸び悩み 収入も赤字で折り返したのです。

それでも新しいパンフレットやDVD、掲示板ポスターなどが効を奏したか、今まで作ってきた地道なネットワークの賜物か11月からはまた見学者が引きもきらない状態になって盛り返し中です。お客様は新しいお付き合いも多いのですが、昔から精神障害者支援を続けている人も見え、旧交を暖める嬉しい時もあります。

生活支援も今年は厳しい状況の方が多く、突然の再発や高齢化による体調悪化の対応、果ては虐待ケースもあり、忙しい中にも考え悩む職員の姿が見られました。
人事考課導入を決定した今年は6月から、コンサルタントの方に新組織を作る為の基盤である(人事賃金制度改定)の為の毎月の研修を受けています。そろそろ実務に入りますが、予想はしたものの何事もあいまいなまま笑顔とやる気だけで乗りきってきた棕櫚亭にとっては、難しい課題の連続で、特にリーダーにとっては大きな変化を迫られています。

この間お伝えしていますが、人材育成として天野ゼミを開催、私も本気で職員向けの講義を繰り返しました。素直で元気な人の多い棕櫚亭では、真剣な学習欲もたっぷりありますが、飲む機会やイベントの企画力もあり、皆で運動会までして遊んだりもしています。(仲のいい組織ですね)と外部の講師に言われましたが、これが利用者の方々に影響しているのか、利用者の方同士の中のよさも格別で、就職準備に追われながらも(今が青春です)と、楽しそうな様子が随所に見られます。

世代交代が進む現場では若い元気な職員達が先輩に習いながら いろいろなことを吸収して大きく伸びようとしています。それを引っ張る先輩や次世代リーダー達も降りかかる火の粉を払いながらの組織作りに余念がなく、消化仕切れないまま飲み込みつつも新しい課題にも果敢に取り組むという気概でまとまってきました。組織は30年で腐ると聞いていましたが、ここで屋台骨を変えながら大きくリニューアルしていけばこの先10年はいけるかもという嬉しい予感の年の瀬です。

社会福祉法人多摩棕櫚亭協会
理事長 天野 聖子

『卒業生インタビュー 1』山下洋輔さん(株式会社いなげやウィング)

法人本部 2015/12/15

卒業生インタビュー 1

みんなピアスにくれば道が開けると思う|山下洋輔さん|ピアス 就労移行支援事業所|社会福祉法人多摩棕櫚亭協会

ピアスのトレーニングを経て就職をされた方は、1997年の開所以来、170名以上にものぼります。(※2015年度時点)
今回は、ピアスを卒業され、現在も継続してお仕事をされている「山下洋輔さん」と、会社の定着支援担当の「千葉康夫さん」へのインタビューを実施しました。
山下さんはどのようにピアスを利用され、それが今のお仕事にどう生かされているのでしょうか?

ピアス入所前の経歴を教えてください

山下さん: 大学を中退して、アルバイトも長続きせず、発病してなびぃのデイサービス、根岸病院デイケアに2年間通い、ピアスに入所しました。

なぜピアスへの入所を決めたのですか?

山下さん: 先生からトレーニングをしておくと、発病前の仕事の感覚も取り戻すことができ、仕事が長続きすると、アドバイスがあったからです。

ピアスでどんなことを学ばれたのですか?

山下さん: 仕事をするには体力が必要なので、週5日4時間のトレーニングをしっかり行いました。そこでは、報告・連絡・相談をしながら作業を身につけるいい機会になりました。また、就職活動で必要となる履歴書の書き方や面接練習等も行いました。

ピアスで学んでよかったという点はありますか?

山下さん: 体力が付いたので休まず仕事に出勤できています。また、報告、連絡、相談が上手に行えるようになったことで、上司とコミュニケーションが取れるようになりました。

現在の勤務時間を教えてください。

山下さん: 入社した当初は6:30~10:30で行っており、その後13:30、15:30と勤務時間を延ばしていったのですが、体調を崩してしまい、現在は6:30~10:30で行っています。

現在はどんなお仕事をされているのですか?

山下さん: 売り場でグロッサリー(食料品・生活雑貨・日用品など)の品出しです。足りない商品を補充したり、奥にある商品を手前に出したり、勤務時間中はずっと動きっぱなしです。

今の仕事を選んだ理由は?

山下さん: 前職で経験があったので、やり易いかなと思いました。

ピアスで体力がついてよかったということですけど具体的にはどういうことですか?

山下さん: もともとピアス入る前は何もしていなかったので、作業をやるような感じではありませんでした。デイケアで一日中座っていたりして。作業する体力がなく、最初は2時間を週3回で、その後に、週5にどんどん延ばしていってちょっとずつ作業に慣れて体力をつけていきました。

意欲や気持ちの部分で変化はありましたか?

山下さん: ありました。最初はデイケアを週に2回行ってピアスは週3回でした。最初は、あまり作業をしたくなかったのでデイケアの方が行きやすかったです。でも工賃はもらえるし、『作業をすればするほどお金にもなるから働く』ということが分かり始めてモチベーションがあがりました。

コミュニケーション面でもピアスの訓練が役にたっていますか?

山下さん: 報連相というものをやったことがなかったのですが、今の職場でも報連相をそのまま使っています。ピアスでは清掃の時に報連相が全くできていないと指摘されました。清掃作業が終わった後に、本当は終わりましたと伝えなければならなかったのに椅子に座っていたんですよ。それで指摘されて以来自覚するようになりました。

ピアスを利用したいと思っているひとたちにメッセージはありますか?

山下さん: 皆さん、順調に生きてきたわけではないと思いますけど、ピアスにくれば道が開けると思うので、是非、利用してみて下さい。


勇気をだして働いてみよう|株式会社いなげやウィング 千葉康夫さん|ピアス 就労移行支援事業所|社会福祉法人多摩棕櫚亭協会

山下さんのお仕事のようすを聞かせて下さい。

千葉さん: 彼は出勤もちゃんとしていたし能力的にも高かったので、何にも問題なかったです。要領とか段取りは教えたけど、病状も安定していて、決まった場所・覚えた場所に出すという単純作業で体を使うような仕事が山下さんのパーソナリティに合っていたようです。「この商品どの通路だったっけ?」と私が山下さんに聞くくらい記憶力が抜群に良いんですよ。

ご自身では、仕事の特性などについて語ることはありましたか?

千葉さん: あまりしてないでですね。どっちかっていうといきなり溶け込んじゃった感じで、真っ先にこの商品はこの通路にあると覚えたのは彼で能力は高くリーダーからの信頼も高かったです。コミュニケーションは得意ではなく、自分で何かを言うことはあまりなかったですが、作業が好き、黙々とこなすのが好きなように見えます。

ご自分の症状を理解されている方は多いのですか?たとえば山下さんの場合はどうでしょうか。

千葉さん: 山下さんは疲れてくると疲れている感じがわかります。一時期、本人より一日6時間で週30時間の勤務時間を長くして社会保険にして今後一人暮らしをしたいという要望がありました。そこでこちらもアクションを起こして時間を長くしたのですが、山下さんが体調を崩してしまって。そのあと時間を戻したら、体調が治ってきましたけどね。

それはご本人が発信できたのですか?それとも周りが気が付いたのですか?

千葉さん: 先にリーダーさんが気付いて、そのあと本人からちょっと無理そうですと申し出がありました。本人の希望だったので分からなくてやってしまったのですが、やるとしてもじっくり伸ばすかなぁ、1時間とか30分とかちょっとずつ時間を延ばせばよかったなぁなどと思うことがありこちらも勉強になりました。

だとすると、実際に時間を増やすときとか、環境が変わる時は自分がどんな変化をするのか、もしかしたら体調が悪くなりかけるとか、そういうことを訓練の間でシミュレーションをして、会社の方と共有できるといいですね。

千葉さん: そういう疲れの兆しを見るポイントなどを伝えていただけたらありがたいなと思います。病気についての知識がない店員などに伝えるのは大変かもしれないですが、この人はこういうところで大変なことになっちゃう、疲れやSOSサインはこうであるとか、パニック発作などに陥った時はこういう対処をしてくださいというようなアドバイスが支援者や本人から出てくると、いいですね。本人も確立していると助かります。

他に訓練で準備できておくといいことはありますか?

千葉さん: 先ほどの基本的なことのほかは、実際に働いてみないとわからないと思います。働くことが一番のリカバリーになるかと思いますし。もちろんある程度前提となることは訓練や勉強をしてもらって、多少自分の対処法とかを相手に伝えられるようにとかはちょっとやって置いた方がいいですが…。仕事って何千種類もあるし、とりあえずは勇気をだして働いてみるというほうが早いような気がします。就職する前に、時間帯など安心して通える条件で職場実習も体験してもらえると、実際に働いているとこんなものなんだ、という感覚がつかめるのでいいと思います。

協力: 株式会社いなげやウィング
インタビュー: 2015年12月

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