前理事長 天野聖子さんが東京都功労者表彰されました

法人本部 2017/10/03

東京都では毎年秋に、名誉都民顕彰及び東京都功労者表彰を行なっています。地域活動・文化・教育などと共に東京都の福祉の増進に貢献した方を表彰するというものです。

そして今回、平成29年度東京都功労者の福祉分野で、今年3月末をもって退職された前理事長の天野聖子さんが表彰されました。

身体障がいや知的障がいの分野から遅れることはるか、平成7年にようやく精神保健福祉法が施行され、ようやく精神障がい者の支援が福祉分野に位置づけられましたが、それまでは医療の一部として扱われていました。しかもこの福祉法施行後も、精神障がい者だけ受けられないサービス・手当などが沢山ありました。福祉事業(施設)サービスに至っては、他障がいと横並びになるのを平成18年自立支援法施行まで待たねばなりませんでした。今でこそ「障がい者差別解消法」など法整備が一層進んでずいぶん改善されてきたとは思いますが、当時を知る職員は同じ福祉でも露骨な格差があったことが忘れられません。

そのように考えると、天野さんをはじめ先達が奮闘してくれたことにより、ようやく今の精神保健福祉分野の地位向上に繋がったのではないかと思います。そういう意味では今回の受賞は、「精神保健福祉の幕開け」の第1章として相応しいものだったのだと思います。

記念すべき棕櫚亭30周年と喜ばしきことが重なりましたが、ここで改めてお伝えしたいと思います。

「天野さん、おめでとうございます」

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天野 聖子さん 職 歴 等 期   間
北山病院精神科ソーシャルワーカー(京都府京都市) 昭和46年4月~ 昭和51年3月
川口病院精神科ソーシャルワーカー(埼玉県川口市) 昭和51年4月~ 昭和56年3月
青木病院精神科ソーシャルワーカー(東京都調布市) 昭和56年4月~ 昭和62年3月
くにたち共同作業所棕櫚亭 施設長 昭和62年4月~ 平成9年3月
社会福祉法人多摩棕櫚亭協会 理事 平成9年11月~ 平成12年11月
同上 常務理事 平成12年11月~ 平成21年11月
同上 理事長 平成21年11月~ 平成28年11月
立川ハローワーク相談員 平成7年4月~ 平成9年3月
社会福祉法人はらからの家福祉会 評議員 平成20年10月~ 平成24年9月
同上 理事 平成24年10月~ 平成26年9月
東京都障害者就労支援協議会 委員(福祉保健局) 平成19年4月~ 平成26年2月
東京都地域移行推進専門研修企画検討委員会 委員(福祉保健局) 平成22年9月~ 平成22年10月
障害者総合福祉推進事業検討委員会 委員(福祉保健局) 平成24年4月~ 平成26年3月
独立行政法人高齢障害雇用支援機構 雇用管理サポート協力専門家 平成22年4月~ 平成24年3月
障害者の職業能力測定基準に関する調査研究委員会 委員 平成22年4月~ 平成24年3月
多摩総合精神保健福祉センターと地域関係機関との連絡会議 委員 平成24年4月~ 平成26年3月
東京都障害者職場定着サービス推進事業推進連絡会 委員 平成27年4月~ 平成28年3月
全国就労移行支援事業所連絡協議会 副会長 平成24年8月~ 平成27年3月
東京都福祉保健局障害者就労支援体制レベルアップ研修 委員 平成21年4月~ 平成23年3月

相模原殺傷事件から1年~何が変わったのか・・・~

法人本部 2017/07/28

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が刺殺、27人が負傷するという事件が起きてから1年が過経ちました。ご遺族、施設関係者の方々、そして何より被害に遭われた当事者の皆さんの事を思うと、どんな一年を過ごされたのか心が痛みます。そして、亡くなられた19人のご冥福を改めて祈らずにはいられません。

さて、死傷者合わせれば46人という戦後最悪の犠牲者を出したこの事件、発生当初は「とんでもない事が起こってしまった…」と、えも言われぬ恐怖感に襲われた事を思い出します。犯人が発したという「障害者はいなくなればいい」という言葉は、「精神障害者の幸せ実現」を目指し、活動を続けてきた私達を、大いに傷つけるものでした。自分たちが確信を持ちながら歩み続けてきた道の足元は、この様にも脆く危ういものであったのだと痛感させられもしました。

それから一年、この事件をきっかけに何か変わったのだろうか?と考えてみます。国ではこの事件を踏まえ、精神保健福祉法改正の議論がされました。しかし議論の中身は、犯人が事件前に措置入院をしていた事から、「措置入院制度の強化とその後のフォロー体制作り」に終始されました。しかし、今回の事件は、精神科医療の不備だけで起きたのかと言えば、そうではありません。この流れで措置入院が強化されていく事は、これまで積み上げてきた「病院から地域へ」の流れや、自発的入院の推進から大きく後退をします。また、フォロー体制作りについても、ご本人が望むものでなければ、ただの地域管理になってしまうでしょう。事件の再発防止を押し付けるかの様に行われたこの改正には、様々な危険が潜んでいると思います。

先日テレビを見ていたら、「何も変わらない一年だった。」というご遺族の言葉が紹介されました。確かに、具体的な手立てがないまま、弱者をバッシングする世の中の風潮は、さらに増していくように感じます。また、年明けになったこの事件の裁判では、被害者の名前は一切明かされない事が決まり、盛んに議論された匿名性の問題についても結局そのままになっています。その他、「開かれた施設とセキュリティーの問題」「過酷な福祉現場とそこから出てくる職員の本音」など、この事件は私達の目の前に様々な矛盾を突き付けました。

ある映画監督がこんな事を言っていました。「どんな事件にも、特異性と普遍性がある。」と… 最初はその特異性に目がいったこの事件ですが、時間が経つとそれは犯人の中にある特異なものではなく、私達の中にもある普遍的なものなのだという事に気が付きます。そしてそれは、なかなか解決し難い課題を、たくさん抱えたものでもあります。でも、議論し続ける事、考え続ける事が大切なのだと思っています。棕櫚亭でもこの問題を考え、分らないなりも自分たちの思いを発信し続けたいと思います。

棕櫚亭が開所してから30年が経ちました。精神障害者の方々を取り巻く状況は、病院に収容されるだけの時代から、地域で当たり前に暮らす時代を経て、社会に出て働くことが出来る時代へと変化しました。ですから、ここまで来た歩みを止めることなく、やはり「開かれた組織」であり続けたいと思います。そして、一人でも多く方の「幸せ実現」のお手伝いが出来ればと思っています。

多摩棕櫚亭協会 理事長 小林由美子

 

 

 

 

 

「緊急発言」天野理事長コメント掲載

法人本部 2016/08/23

考え続ける、ここまでの活動の正当性を信じて発信し続ける

とんでもない世の中になってしまったと、頭を抱えるようなことが多くなった昨今ですが、相模原の事件には本当に驚きました。
報道されて3週間たっても震えがくるような気持ちは一向に収まりません。被害者も加害者も障害者で、19人もの惨殺となればいろいろな立場の人を深く傷つけ、もしかしたら二度と立ち上がれないような思いにさせているのかも知れません。
この中で語られる二律背反的な価値観、病気の開示と匿名性の確保、施設の開放性とそれによるリスク、引き出される自分たちの本音と福祉職員としての理念など立場によって、見方によってさまざまな思いがわきあがるこの問題は、それぞれにがんばってきている人達の神経をも逆なでしています。
それなのにあっという間に世間の関心はオリンピックに移り、またしても風化して消えてゆきそうです。残るは精神障害者は何をするかわからない、恐ろしいという昔ながらの根強い偏見… それが、またしてもじんわり社会に蔓延してゆくのではないかという嫌な予感がします。実際に、会社で同僚の会話に「精神障害者は怖い…」という話が出てきて、暗澹とした気分になった当事者の方もいます。

変わらない非正規雇用と低賃金と人手不足ゆえの重労働、在日の方々へのヘイトスピーチに端を発したネットなどでの暴言や差別発言が、一番弱い立場に向けて噴出するという大きな背景にも、目を向けたいものです。
措置入院や医療のあり方、司法と精神保健の狭間や責任能力という課題にテーマは移りそうですが、この容疑者の幾重にも屈折した存在に対してももっと何かができなかったのかも考えさせられます。
棕櫚亭では今回2度に渡って職員会議を開き、それぞれに深く思うところを一緒に考えました。共通しているのは一昔前にはあった精神障害者差別が、何十年の積み重ねの中でやっと変わってきたのに、それが容易に崩されてしまうのではないかという恐れや、悔しさでした。
その後メンバーの皆さんにも病気をオープンにして働くことや、名前を出して講演することなど自分たちの活動は揺らがないこと、全体としては隔離収容の時代から遠く離れ、多くの人の理解はゆき渡ってきたことなど話しました。
終わらない問題、解決できない課題をたくさん飲み込みながら、考え続けること、ここまできた活動の正当性を信じて、発信し続けることこそ大切な時だと思います。

7月23日の報告会では地域の方がたくさん来てくださいました。(平成27年度「多摩棕櫚亭協会の事業活動報告会及び研修会」が開催 をご覧ください)
地域で生まれ大きくなった私たちです。これからも地域に開かれた多摩棕櫚亭協会でありたいと思います。

社会福祉法人多摩棕櫚亭協会
理事長 天野 聖子

「年の瀬に思うこと」天野理事長コメント掲載

法人本部 2015/12/28

世代交代が進む現場では
若い職員達がいろいろなことを吸収して
大きく伸びようとしています

1年はあっという間ですが平成27年も実に足早に通り過ぎていったという感じがします。
思えばその前の年、大規模修繕を終え、綺麗になったピアスで、6年ぶりの活動報告会を行ったのが6月です。自立支援法正以来追い立てられるような流れの中、地域の諸問題からかけ離れてきたのではないか。ただの就労支援事業所になってしまっているのではないか、そんな思いでいたところ、今度は社会福祉応の改正が出てきて、社会福祉法人の体質改善と共に地域貢献が取り上げられ、私達の心配も先どりされる時代であることに臍をかむ思いをしたところです。
更に国の規制緩和による営利法人の参入が精神障害者のサービスに及んでまさに(市場原理主義という言う一匹の妖怪が現代の先進資本主義を跋扈している)という状況になり、個別支援最先端のピアスも影響を受けました。10人が就職した9月以降は珍しくピアスの利用者数が伸び悩み 収入も赤字で折り返したのです。

それでも新しいパンフレットやDVD、掲示板ポスターなどが効を奏したか、今まで作ってきた地道なネットワークの賜物か11月からはまた見学者が引きもきらない状態になって盛り返し中です。お客様は新しいお付き合いも多いのですが、昔から精神障害者支援を続けている人も見え、旧交を暖める嬉しい時もあります。

生活支援も今年は厳しい状況の方が多く、突然の再発や高齢化による体調悪化の対応、果ては虐待ケースもあり、忙しい中にも考え悩む職員の姿が見られました。
人事考課導入を決定した今年は6月から、コンサルタントの方に新組織を作る為の基盤である(人事賃金制度改定)の為の毎月の研修を受けています。そろそろ実務に入りますが、予想はしたものの何事もあいまいなまま笑顔とやる気だけで乗りきってきた棕櫚亭にとっては、難しい課題の連続で、特にリーダーにとっては大きな変化を迫られています。

この間お伝えしていますが、人材育成として天野ゼミを開催、私も本気で職員向けの講義を繰り返しました。素直で元気な人の多い棕櫚亭では、真剣な学習欲もたっぷりありますが、飲む機会やイベントの企画力もあり、皆で運動会までして遊んだりもしています。(仲のいい組織ですね)と外部の講師に言われましたが、これが利用者の方々に影響しているのか、利用者の方同士の中のよさも格別で、就職準備に追われながらも(今が青春です)と、楽しそうな様子が随所に見られます。

世代交代が進む現場では若い元気な職員達が先輩に習いながら いろいろなことを吸収して大きく伸びようとしています。それを引っ張る先輩や次世代リーダー達も降りかかる火の粉を払いながらの組織作りに余念がなく、消化仕切れないまま飲み込みつつも新しい課題にも果敢に取り組むという気概でまとまってきました。組織は30年で腐ると聞いていましたが、ここで屋台骨を変えながら大きくリニューアルしていけばこの先10年はいけるかもという嬉しい予感の年の瀬です。

社会福祉法人多摩棕櫚亭協会
理事長 天野 聖子

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