第3回 おいしい時間 実施報告会

法人本部 2017/02/21

 

「夏休みに給食がなくて痩せちゃう子供達がいるんですって、何とかできないかしら?」

そう言って民生委員さんたちがピアスに駆け込んできたのが始まりでした。その後生長の家神の国寮、公民館、市の職員、スクールカウンセラー等が集まり何回か会合を重ねました。地域に向けて20年間お弁当配達をしているピアスは夕方の20食200円の弁当配達を引き受けました。神の国寮はコスモス広場を提供、スクールカウンセラーはそれを必要としている子供を紹介、子供達に対応しつつ、話しかけたり、送っていったりするのは民生委員の女性達と集まったボランティア・・そんな分担が自然に出来た(おいしい時間)の第3回の実施報告会でした。

FullSizeRender2「又来たいっていってくれたの」

「わぁ、今回はリラックスしてた、いい笑顔だったね。」

「帰りがちょっと心配だった空、もっと早く出ようかしら」

などなど報告する人達の優しい会話にこちらもうれしくなりました。

「棕櫚亭さんのご飯が美味しい、インゲンの胡麻和え最高」

「子供達が、美味しいご飯をみんなで食べること、が一番の目標だからしつけやルール等は後から考えよう」

「又来たい!」

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って言われるようにしたい・・そんな報告を聞きながらなんだか棕櫚亭の始まりのときみたいだと思いました。聞けば一緒に来るお母さんも安心して食べている様子、その報告を「よかったー、嬉しいね」と言い合う方々が、地域でいろいろな活動をしているのですね。

そういえば昨年から公民館の学習支援室(国立ラボ)にも夕方からお弁当を配達していますが、こちらは小中学生で食欲旺盛だから足りないこともあるとか、とにかく美味しい、嬉しい、助かると言われています・・関わる人も一生懸命だし、みんなで食べながらいい時間を過ごしていくさまざまな地域の活動に、近頃はよく声がかかるようになりました。

棕櫚亭も普段とは又違う形ですが、こんな風にお役に立ててとても幸せです。

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【報告】職員研修旅行 ~続編~

法人本部 2017/02/08

12月に若手職員発案の社員研修旅行に行ってきたことを以前報告させていただきました。
本来、この研修旅行は「今の棕櫚亭職員が考える行動指針を作りたい!」と思い、企画していました。行動指針をつくるため、組織や自分について職員同士語り合いましたが、気が付いたら三時間にも及ぶ盛り上がりになり、旅行中には、最終目標であった行動指針までたどり着きませんでした。しかしなんとか最後まで完成させたい!と職員が満場一致して次回持ち越しとなりました。そして1月24日にその続編を行いました。

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前回は今後の棕櫚亭を考える為にはまず棕櫚亭を知らなければ!と思DSC_0495い、天野さんに棕櫚亭の30年史を語ってもらいました。そして今回ですが、研修旅行に参加できなかった職員もいたため、棕櫚亭の経営陣の中で唯一の男性であり、棕櫚亭の縁の下の力持ち的な存在である事務長の荒木さんに、彼からみる棕櫚亭を話していただきました。作業所時代からの経験、利用者さんに対する思い、今の自分のあり方などの話をしていただきました。その中で、今は組織も大きくなり、効率的かつ専門的な支援を行えるようになったけれども、それは自分の専門の範囲でしかその人を見なくなるというリスクを含んでいるという話がありました。業務に追われる日々の中で対人援助職として一人の人と関わるということが何なのか、忘れてはいけないことを再度認識させていただいたような気がします。

DSC_0499こうして、参加した職員が、行動指針を考えるエキスを注入してもらったところで、グループでの話し合いに移りました。各グループとも、様々な意見を出し合いながら、行動指針につながる様に言葉をまとめていく作業をしました。そして、最終的には、各グループから出たものから多数決をとり、一グループの意見を選びました。それが、以下の言葉です。

「私達は、常に疑問を持ちながら、考え、自分の言葉で言語化する。同時に、様々な情報を取り入れ、たくさんの人に出会いながら、考える材料も増やしていく。その過程で、利用者とも誠実に向き合いながら、人として深まり・チームとしても成長する。」

これらは、棕櫚亭の理念にもある「精神障害者の幸せ実現」に向けた、基本的な姿勢を表す言葉でもあります。今回は最終目標であった行動指針をつくるというまでには至りませんでしたが、みんなで考える第一歩が踏み出せたと思います。

DSC_0496研修旅行から始まった企画でしたが、棕櫚亭30年の歴史を知り、お互い感じていることを伝え合い、今後の棕櫚亭について事業所の垣根を越えて語り合いました。業務に追われる日々ですが、職員が組織について深く考えることでより結束力が強くなるいい機会になったと思います。新しい歴史をつくる現職員を温かく見守って下さい。

オープナー 本田美咲

賛助会通信「はれのちくもり」を発行しました

法人本部 2017/02/01

棕櫚亭の賛助会通信『はれのちくもり』第84号(H29年1月号)を発行しました。

賛助会通信29年1月号

昨年11月の役員改選後、初の賛助会通信の発行となります。「はれのちくもり」という名前に込められた天野前理事長の想いや、小林新理事長による理事長就任のご挨拶を掲載しました。また12月に行われた職員研修旅行の報告、及びに職員の研修報告から抜粋した感想も載せております。

なかなかの盛りだくさんな内容となってしまい、読み難くて恐縮ですが、是非ご一読ください。

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【報告】職員研修旅行

精リハ学会・ベストプラクティス賞 受賞!

 

新年明けましておめでとうございます。

法人本部 2017/01/12

今年は暖かな年越しとなりましたが、ここ数日、急に寒さが増してきました。皆さん、風邪など引いていないでしょうか?

さて、棕櫚亭の昨年は、10年かけて取り組んできた組織継承の総仕上げと、改正社会福祉法への対応とが重なり、二~三年の出来事が一挙に押し寄せてきたような年でした。「あぁ~、一波超えた。」と思うとまた一波、時には二波三波が押し寄せ、「なんでこんなに次から次へと・・・」と愚痴の一つも出てきそうな事もしばしばでした。

しかし、外に目を向けてみれば、世界全体では二波三波どころではない事が起こっています。グローバル化の名の元、押し進められてきた様々な取り組みは、イギリスのEU離脱や、アメリカでのトランプ大統領の誕生と保護主義へと大きく傾こうとしています。さらには、各国で多発するテロ、難民の問題など根底を大きく揺るがす出来事ばかりです。国境の垣根を越えて一つになるはずだった世界は今、対立し分断され様としています。この様な現状を目の当たりにすると、愚痴どころの話ではなく、悲嘆に暮れてしまいます。「『起こるはずがない』なんて事はこの社会にはなくなってしまったのだ。」と、痛感せざるを得ません。そしてこれは対岸の火ではなく、日本で起こる様々な悲惨な出来事とも、どこかでつながっているはずです。

では、この刻々と悪くなる状況に、私達はどう対応すればいいのか?正直、いい答えは浮かびません。でも分らないなりに考えてみて、まずは当たり前の様ですが「目の前の人達を確実に幸せにしていく事」が大切なのではないかと思います。一法人が出来る事は限られていますが、それぞれの法人、事業所が、出会った方々を確実に幸せにしていけば、それが多くの幸せにつながり、今、劣勢の状況も変わっていくのかもしれません。さらに言えば、悪化していると見えるこの状況も、見方を変えれば「一つの変化」、新しい時代が始まる胎動と見る事も出来ます。ですから、この変化にきちんと乗っていける力をつけることも必要だと思っています。ただ急激な変化ですから、油断していると激流に飲み込まれてしまいます。だからこそ、内に閉じこもらず、たくさん学んで、たくさんの人達とつながっていく事がより大切になってくると思っています。

今年は、棕櫚亭にとっても新しい変化の年です。昨年12月には各現場を天野前理事長とまわり、メンバーの皆さんに理事長交代のご挨拶をしてきました。皆さん前理事長の話に熱心に耳を傾け、言葉の一つ一つを胸に刻み込もうとしていました。横で一人一人の表情を見ていると、「自分達にも組織継承のバトンが渡されたのだ。」と自負している様にも見え、頼もしく感じた瞬間でした。一方、職員はというと、昨年初めて、若手職員が企画した研修旅行に行ってきました。秋川に一泊二日で出かけ、そこで前理事長から「棕櫚亭の30年」を聞いて、改めて創設世代の熱いパワーに触れました。その後、グループに分かれて「私と棕櫚亭」をテーマに議論し、各職員がポストイットに「こんな組織にしたい!こんな自分でありたい!」と思いを書き込みました。現場が違い、一緒に話す機会が少ない職員同士が、お互いを知る貴重な時間となりました。今後はこの集まった思いをまとめ、最終的には、新しい棕櫚亭の行動指針にしていこうと、旅行の企画者達は考えているようです。これも頼もしい話です。

とにもかくにも、よちよちとですが新体制は歩み始めました。やる気だけはみんなあります。足りない知恵は周りの皆さんから頂きながら、悪い変化を食い止め、いい変化に変えていける様なサービス作りを目指します。今年もどうぞ棕櫚亭をよろしくお願いいたします。

理事長 小林 由美子

 

 

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【お知らせ】冬期休暇について

法人本部 2016/12/29

~ 冬期休暇のお知らせ ~

12月29日(木)より法人のすべての事業所が冬休みに入ります。

「ピアスが1月4日」、「なびぃが1月5日」、「オープナー・棕櫚亭Ⅰが1月6日」より、開所となります。

新しい年も、社会福祉法人多摩棕櫚亭協会をご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会

「LABO☆くにスタ」クリスマス会!

法人本部 2016/12/26

国立市公民館の中高生のための学習支援事業「LOBO☆くにスタ」で開かれたクリスマス会に参加させていただきました。ピアスでは、このLABO☆くにスタに月1回程度お弁当をお届けしています。

12/14当日は、3つのグループに分かれて、それぞれのグループで2品作りました。私が入ったグループでは、カボチャのミルク煮とチキンカツを作りました。ケーキを担当したグループでは、オーブンに入れた生地が横からマグマのように溢れでてきて、大慌て。

手慣れない感じがありながらも一所懸命やっている姿が微笑ましく、私もできることをお手伝いしていきました。この事業にスタッフとして参加している大学生は、一つの大学からではなく、それぞれの大学で募集をみて、応募されてきた学生さんだそうです。何人かの学生さんや地域のボランティアの方たちとお話をしていく中で、それぞれの思いや楽しさを教えていただきました。

山のように出来上がった料理は、食べ始めるとあっという間になくなっていきました。特にみんなでアイデアを出し合いながら、なんとか形になったケーキは、また格別に美味しかったです。私たちが届けるお弁当も、こうしてあっという間に喜んで食べていただけているのだろうと思います。この事業に、少しでもかかわらせていただいていることに、喜びを感じる時間でした。

地域貢献は、今、棕櫚亭の大きな目標の1つでもあります。これからもどんどん地域の事業にも目を向け、一緒に参加したり、企画をしたり、やれることをどんどんやっていきたいと思います。

(増田静枝)

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【報告】職員研修旅行

法人本部 2016/12/16

「みんなで旅行したい!」と半ばノリと勢いで発案した研修旅行
みんなが参加出来るようにということで、先日秋川渓谷の旅館に行ってきました。

研修には、26人の職員が参加
まず天野さんに棕櫚亭の30年を語ってもらい、現リーダーの方々にメンバーとの忘れられない出会いや苦しかった体験を語ってもらいました。それからグループに分かれてどういう組織を自分がどう作ってゆきたいか、自分がどう変わっていきたいのかなど話し合いました。
自分と向き合い、お互いのことを知り、「精神業界を変える!」と野望を語り合い…濃密な研修になりました。私自身この研修の中で、利用者の苦労や辛さを受け止められてないのではという思いがずっとあり、そんな自分に恥ずかしさを感じていることを先輩方に相談しました。年齢と経験を重ねていくことで感じ方が変わっていくこと、わかりたいという気持ちが大事だというアドバイスを受けて少し気持ちが軽くなりました。

研修後は皆で楽しい時間を過ごしました。宴会、出し物、マージャン。お酒がなくなっても話は尽きず、夜中の2時すぎまでこたつに入っておしゃべり。翌日にはまたまたお酒を飲みながらBBQと思い思いに楽しみました。

3時間を超える研修は今までの30年、先輩方が築いてきた棕櫚亭の歴史の続きは私達が創るんだ!という大きな志をもって終えました。精神障害者の幸せ実現に向けて、組織のより強い団結力が生まれた研修旅行になったと思います。 期待と不安で企画し始めた初の研修旅行は、何事にも楽しむ棕櫚亭らしい旅行になり、準備は大変でしたがやってよかったです。

皆さん、お疲れ様でした。
オープナー 本田 美咲

【報告】愛媛県松山市の事業所等見学

法人本部 2016/12/09

11月の全国就労移行支援事業所連絡会のタウンミーティングの合間に愛媛県松山市近隣の事業所を訪問させていただきました。今回の見学にはねっとworkジョイの高石さんにご協力をいただきました。

  1ヶ所目のきらりの森は松山市にある就労移行、就労継続B型、自立訓練を行っている多機能型事業所です。

就労移行では清掃、介護資格取得の2つのコース、継続Bでは、レストラン、弁当の製造・配達、ケーキの製造販売、自立訓練では対人関係の練習や整容、入浴などのQOL向上のための訓練が行われていました。スタッフの関わりは指示、見守りが中心で、利用者の方が、自分で判断をし、それぞれの作業を進めていたのが印象的でした。

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 施設長の平田さんからお話を伺うと、きらりの森の開設にあたり、近隣の方々からの理解がなかなか得られず、苦労したというお話でした。しかし現在はお隣の児童館、福祉センターと共に地域の資源として認知されている、とても地域に開かれていると感じました。それも子供連れでも居心地の良い空間作り、美味しくリーズナブルなランチなど、地域の方に利用してもらうための様々な工夫がなされているからなのだと思います。

 2ヶ所目は松山記念病院です。病床600床の精神科病院、精神科デイケア、訪問看護ステーションなどを運営されています。病院内は写真を撮らせていただくことはできませんでしたかが、どの病棟も明るく、ゆったりとしたスペースで、昔の精神病院ような閉塞感とは無縁な作りになっていました。

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 病院の敷地内にある地域活動支援センターステップも見学させていただきました。病院内のデイケアは年齢が高い方が多いとの事でしたが、こちらは若い発達障害の方の利用が多いそうです。こちらでは日中活動の一歩として喫茶店の運営をされていました。

地域活動支援センターが喫茶店やっている!という事にとてもびっくりしましたが、就労のイメージ作りにつながることや、地域にも開かれている事が、リハビリテーションに有効なのではと思い、とても素晴らしいアイディア!と感じました。

 3ヶ所目はぶうしすてむさんです。IT関連を中心とした在宅就労を支援している就労継続A型、B型の事業所を運営されています。

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 理事長の川崎さんから遠隔地就労、在宅就労の可能性や、障害ある方々の労働力をどのようにして企業と結びつけていくのかなどなど、熱い想いをたくさん聞かせていただきました。

 見学で感じたのは、障害ある方々の支援に決まった形は無いという当たり前のことです。障害ある方々の幸せの為に何ができるか、制度にとらわれすぎず、自由な発想で考える事が大切。その為に地域に根差し、時として地域を越える発想力、実行力を持つ事。今回の見学はとても刺激的なものでした。私たちの支援にも生かせる点が多々ありました。この様な機会をいただけて本当に嬉しく思います。高石さんをはじめ、ご協力いただいたみなさんありがとうございました。

ピアス 吉本

 

精リハ学会・ベストプラクティス賞 受賞!

法人本部 2016/12/07

先週の12月1日(金)、日本精神障害者リハビリテーション学会第24回長野大会において、「第9回ベストプラクティス賞」を棕櫚亭が受賞いたしました。この賞は、日本精神障害者リハビリテーション学会が2008年に創設したもので、日本の精神保健医療福祉の現状を踏まえ、精神障害者のあるべき姿を展望し、それに到達するためのモデルとなる実践に贈られるものです。選考にあたっては「ボストン基準」と呼ばれる、ベストプラクティスを評価する6つの世界基準に加え、学会独自の基準を加えた8つの基準を満たす必要があり、棕櫚亭の活動は、それを満たしていると評価を受けました。IMG_2305

また、この賞に推薦してくださった社会福祉法人巣立ち会 理事長の田尾有樹子さんは、推薦文にこんな事を書いてくださいました。

『精神障碍者の多くが働きたいと願っている。しかし、かつてはその願いも、「再発の危険が高まるから」「無理をしない方がいい」などのパターナリズムの中で、支援者が握りつぶしてきたような歴史がある。そうした中で、棕櫚亭は当事者の願いに沿った支援を実行していこうという思いのもとに、就労支援に取り組んでいった。かつての作業所時代に期限を2年間と切って就労支援を行ったのは棕櫚亭が最初と思われる。現在、障害者総合支援法の中で、就労に関するリハビリテーションが「就労移行支援」という形で、こんなに発展してきているその最初のモデルを作ったのが棕櫚亭であり、就労リハビリテーションに大きく貢献してきていると考えられる。障害者就労を国が支持することで障害者の自立が促進されるという認識を国にもたらしたことも大きな功績で、その後の雇用率拡大や精神障害者を正式に雇用率に算定していくことにも棕櫚亭の活動が寄与してきている部分があると考えられる。』

棕櫚亭の今までの活動を評価してくださった嬉しい言葉です。

そしてこの受賞は、来年30周年を迎える、棕櫚亭への最高の餞となりました。今後もこの名の通り、「ベストプラクティス」を続けていけたらと思っています。本当にありがとうございました。                     (理事長 小林 由美子)

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理事長退任に当たって

法人本部 2016/12/05
本当に終わりという日が来るものだと新理事長に花束をもらって、しみじみ思った最後の理事会でした。悲しいとか寂しいとかよりやっとここまで来たという安堵感と嬉しさでいっぱいです。
世代交代、組織継承をお題目のように唱え続けたこの数年でした。現場の忙しさや、ワーカーであり続けたい、経営者になりたくないという次世代リーダーたちの本音が漂う中、本当に大丈夫なのかという不安が胸をよぎったことも多々あります。多分現状維持が一番簡単だし、現場も充実するかもしれない。それでも、30周年を迎える今、敢えて交代してゆくことが棕櫚亭にとって必要だと思ってきました。グループは生き物と言いますが、組織も時には生々しい生き物です。職員もメンバーも入れ替わりがあり、事業も時代的制約の嵐で、波風が立つことも多々あります。その中でいつも考えていたことは、全体力量を意識すること、やりがいをもってみんなが働けるよう条件整備と環境づくりに勤めること、問題や課題は議論して早めに解決することなどなど案外地道な(時には保守的な?)ことでした。経営状態が悪化したり、定員割れになったり、いざこざの絶えない組織では良質な対人援助ができるはずはありません。小さくとも風通しのいい棕櫚亭をそのまま渡したいというのは実は私の悲願でした。
精神障害当事者や家族が少しでも楽になる為に、まだまだやることの多い長い仕事だから、次世代また次々世代と繋げていかなければならないのです。そういう意味では40代後半から50代のベテランが数名いて、30代に厚みのある今が一番の交代時機です。そのことを随分話し合って目配り気配りしてきましたが、本当にここでバトンを手渡すことができて幸いです。

ふりかえればさまさまなことがありました。精神病院15年の勤務で5回の転職、時には解雇、時には休職というあまり褒められない働き方をしてきた私が、棕櫚亭で30年働かせてもらえたのは、実に幸運でした。思えば医療ヒエラルキーに反発して、創設者の女たち4人が自在に動きまわり、社会福祉法人にしてからは、組織自体が社会化していく過程で、私自身もいつしか大人になっていったようです。
この間出逢った多くの当事者と、喜びを分かち合ったり、挫折や再発に向き合って涙したりー。そんな時間は私の中にしっかり刻まれていて、これが、まさに私にこの仕事を通算45年続けさせた一番の原動力でもあります。亡くなった方達、消息のわからない方達、無念の思いで病院にい続けた方達にも深く深く御礼を言いたいと思います。この思いは確実に次の世代につなげるということ、それを伝えた上での降板だということもご理解ください、本当にありがとうございました。

PS なぜかバンコクのスタバでこれを書いています。息子宅の新生児育てのヘルブとして来て一週間。家事育児の苦手な私の新しい試練です。
いつも棕櫚亭周辺にいた子供達も育っていき、私自身がやっと大人になったと思ったら、もう孫持ちのおばあちゃん。次の命はぐんぐん大きくなってゆきます。世代交代はそこから見ても自然の流れなのでしょう。

再来週には国立に戻って、来年、3月31日までは棕櫚亭の職員として働いています。皆様遊びに来てください。

社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会 前理事長 天野 聖子

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